シュガーダーク 埋められた闇と少女

 面白かった! 不安要素で一杯だったけど、流石スニーカー大賞。良い作品でした。これは素直に大賞で文句なしの仕上がり。腐っても、スニーカー大賞の名前は伊達では無かった。だがしかし、あとがきで言及された続編は止めた方が良い。絶対に蛇足の可能性。キャラと時代を変えるなら良いかもしれないけど。
 文章が非常にいきいきとしていて、読み進めながら実際に光景が浮かぶくらいの綺麗な文章。描写の丁寧さが過分でなく不足でもなく、丁度良い分量で配置されているのが心地良い。主人公が名前を奪われた設定なので、最後の最後でその名前が重要になるんじゃないかと思っていたけど、思いの外あっさりと最初から出てきたのは予想外。ストーリー全体では、実はあまり大したことをしているわけではないけど、一つの結論に至るまでの過程というか、そこに至るまでの空気感が非常に良かった。ある意味で、雰囲気系ノベルの最高峰かも知れない。
 とにかく、キャラクターの息づかいが感じられるくらいの描写力の高さが良い。反面、この作家はきっとこれ以上の描写力を手には入れられないだろうな、と思うくらいのレベルの高さ。あとは、バカみたいに面白いシナリオを書けるようになれば、凄すぎる新人の誕生だと思う。これは絶対に読むべき一冊。シナリオの面白さを追うと言うよりは、本当に文章の匂いを感じる為に。
 とは言いつつ、シナリオも実は結構レベルが高い。トータルで非常に完成度が高くて、素晴らしい。ザ・ダークとメリアが戦うシーンはやや迫力に欠ける気もするが、全体的にテンポ良く話が進んで、しかも主人公の心情の変化を綺麗に描きつつ、最後の結論に至るまでの過程をスムーズに導いている。
 キャラが可愛い。イラストの素晴らしさもあるんだけど、メリアもカラスも可愛い。話もイラストも一級品で、本当に良い作品。特にカラスがマジ可愛い。あの挿絵は反則。
 欠点を言うならば、ザ・ダークに触れるときの描写などが、抽象的というか、反対の言葉ばかりを並べて逆に掴みづらいという所。あるいは、その掴みづらさを狙ったのかも知れないけど、ザ・ダークに関して言及のあるシーンだけは、なんだか光景が想像しづらかった。
 今年の最後の月に出たのに、今年の一番の怪物が飛び出した。いくらスニーカーが嫌いでも、やっぱり大賞のブランドは依然として健在。シュガーダーク、最高でした。

 名言
「なんだってやれるさ」