ダンタリアンの書架 2

ダンタリアンの書架2 (角川スニーカー文庫)

ダンタリアンの書架2 (角川スニーカー文庫)

 これは面白い。ラノベとしてのレベルが高いだけじゃなく、イラストのレベルも高いのが個人的にとっても高評価。
 ストーリーは全て短編。元々がスニーカーで連載している短編を加筆して単行本にしたものらしい。一つ一つの話がとてもうまく纏まっていて、どこから読んでも楽しめるのが非常に良い。幻書というキーワードの理解に必要な前作「ダンタリアンの書架」に収録されている第1話だけ読めば、他はどこから読んでも問題なく読めるのがとっても良い。若干、THE嫁ぎ遅れだけが準レギュラー化しているところを除けば、主役の二人以外に一人もレギュラーキャラが存在しないところも凄いと思う。
 もしかしたら形としては、「ほうかご百物語」に少し近いモノがあるかも知れない。けれど、「ほうかご」があくまで時系列を踏んで短編を作っているのに対して、今作は本当にどこから読んでも問題なく読めるところが素晴らしい。このペースで三巻まで面白かったら、間違いなく秀作の部類に入る作品だと思う。
 ヒロインのダリアンが凄まじくツンデレのうえに、今回はねらー疑惑まで発生。詳細は名言の方へ。それにしても、屋敷に強盗が押し入ってきた時にダリアンが呟いた、「お気に入りを傷つけられた」という台詞がもうツンデレすぎてツンデレすぎて、ああ愛しい。尊大な喋りをするゴスロリ幼女でビブリオマニアって、一体どこで俺の心を読んだってくらいピタリはまるキャラで怖い。
 各ストーリーに登場するキャラクターたちは、言ってしまえばそのストーリーにしか登場しないけれど、それが故に皆なかなかに良い味を放っているキャラばかりで、これも今作がとても面白い理由の一つである。そもそもがバックグラウンドをハッキリさせる必要の無い短編というスタイルである以上、常に一発のインパクトが勝負である。その点では、ハッキリ言って最初からある程度犯人も読めるし(推理系の話では。というか、最初から作者の隠そうという意図を感じない)、キャラもなかなかにありきたりな気がする。けれどそれを補うだけの背景描写が、それぞれのキャラを生き生きと活動させる理由だと、自分は思う。作り出された舞台背景が、ありきたりな役者でも十分にその場にふさわしく思えるように仕立て上げてくれている。それが、今作だとおもう。そういうのはとても好きだ。
 そんなこんなで、この「ダンタリアンの書架」シリーズは、かなり面白いと思う。これは、著者の三雲岳斗氏の前作も読むべきなのだろうか……悩みどころである。

 名言
「当然の報いなのです。あいつらは、私のお気に入りに傷をつけたのですから」

「お前以外に誰がいるのですか。おまけに今日も変な服装なのです。その腹の赤いやつは、天敵のカラスに襲われないようにするための警告色なのですね、わかります」