ナインの契約書II -The first day of last days-

 面白いんだけど、気にくわない。クラウン・フリントと同じ類のラノベです。
 格好つけタイプというか、押井守系というか、とにかくスカした雑学が随所に挟まれるのと、これまたスカした比喩が多用されてて、非常にげんなり。何もかもがスカしすぎてて、かえってカッコ悪い感じになっている。押井守くらい引用に哲学を感じさせてくれればそれはそれで良いんだけど、そこまで突き抜けているわけでもなく。というか、ラノベで押井的な「台詞は全て引用である」的な哲学を発揮するのはちょっと無理かな。
 だがしかし、ストーリー自体は結構面白いんだこれが。ホントにクラウン・フリントと同類で、ストーリーは好きなのに、無駄に格好付け過ぎちゃってて格好悪くなってるラノベ。前作もそうだったし、今作も面白いんだけど……うーん。
 前作は大体全部の展開が読めていたけれど、今回は意外に読めない展開が多くて、ちょっと楽しめた。文章も相変わらずスラスラいけるし、テンポも良い。けれども、すげえ面白い! って興奮するほどの筆力ではないし、かといって下手とも思わないし、なんと評価しづらいんだろう。
 滝本小説が出てきた瞬間はちょっとだけ噴いた。そういう小ネタは意外に好き。大原さやかのナレーションが流れる鉄道は、多分京急線。俺も乗ったときに「ん?」と思って調べたら、確かそうだった(と思って調べ直したら、京急以外にも意外にいっぱいあった)。京急線沿いで病院に近い駅って、何処だろう……。
 楽しいんだけど気にくわない、けど続きはちょっと気になる。クラウン・フリントタイプのラノベが増えて嬉しいやら腹立たしいやら。

 名言
「もう、ミッキー、悩んでないで当たって砕けなさい。ガラガラピッシャンって」