ペンギン・サマー

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

ペンギン・サマー (一迅社文庫)

 面白い、面白いよ! 正直、一迅社だから外れてもまあいいかなーくらいの気持ちで、「バカだけど、以外とロジカル。こんなxxSFが読みたかった。いやマジで。」というオビを信じて買って損は無かった。
 小説部分は全部で248ページなんですが、192ページに至るまで全体の核心が掴めない反面、一気に畳みかけるくらいの勢いで伏線を回収してくれる様が気持ちいい。むしろ、192ページに入った瞬間がテンション最高潮。小説の先の展開を読むのは結構得意だけれど、今作は192ページという最期の方まで読めなかった。勿論、最期まで伏線を張り続けたから推理のための鍵が足りないというのもあったけど、それにしても上手く伏線を張り続けたと思う。
 こういう、いくつものスタイルでふざけた感じで話を展開しつつも、最期はきっちり締めてくれラノベって大好き。フツーのスタイルだったり、独白になったり、報告書だったり、台詞だけたったり、全部が全部必要なスタイルで、作品の印象づけには最高のチョイスだと思う。というか、とても面白かった。最初は「んー、外れ引いたか?」と思ったけど、いやあ、ページ捲る度にどんどん手が離せなくなっていく。ある意味でタイムリープSFがメインだよね? 他にも色々とSF要素あるけど、タイムリープ部分が一番大きいウエイト占めてる。タイムリープものって、大抵作者がつまらなくないように自信もって書いてるのが多いから、あんまり外れないのが好き。
 ただ、タイム・パラドックスの扱い方が前時代的だなー、とは思ったり。その辺がちょっとロジカル系とは言い難いけど、それでも十分に面白いから問題なし。
 伏線の全部が結構テキトーな感じで放っておかれてる印象だけど、あえてその解説をしなくても、最終的にはこれが正解なんだ、というのを無言で理解させてくれるのも良い。結局なんだか分からないような曖昧な終わり方じゃなくて、今までの伏線を全部考えると、こういう答え以外にあり得ないという、ちょっとだけ推理的な要素もあるところが面白い(別に推理なんて大げさな物ではなく、ちょっと考える程度だけど、それでもメインはSFなのに、そこまでのサービス精神が好き)。
 唯一の難点は、首領と博士のキャラが薄いかなー。というか、さっぱり分からん。面白い奴らってのは分かるんだけど、絵もほとんど無いし、出番も台詞一辺倒のしかもコメディパートだから、ちょっと薄い。
 ほぼ全部の伏線を綺麗に回収するし(謎解きと解説は無いけど、答えありきでご想像にお任せ形式)、しょっちゅう文書スタイルが変わるからなかなか飽きないし、いやあ良い買い物だった。六塚光先生、要チェックです。

 名言
「隆司ー! クビナシ様捜索ツアーに行こうぜ!」