サクラダリセット

 乙一の推薦に釣られて購入。乙一の書く話とは毛色が少し違った気もするけど、まあ書いている物と好きな物は必ずしも一致しないかも知れない。
 乙一推薦だから、てっきり凄く切ない超能力ストーリーかと思ったら、そんなことは無かったぜ。普通に超能力バトルと少しだけ推理の話。どちらの要素もあまりに中途半端な気がして、あまり好みではない。あと厨二病
 語り手の厨二病っぷりが凄い。むしろ、一昔前に流行りすぎて最近ではあまり見なくなった感じのスタイル。ほとんどの台詞がちょっと哲学的な響きがする曖昧な感じの受け答え。そしてヒロインが感情希薄で主人公の言うことだけを聞くタイプ。正直、古いなーと思ってしまう。これであと世界系の要素が混じってたら、出版が十年遅かった気がしてしまう。ついでに、乙一推薦と書いてあったから、超能力で大切な人が死ぬだの、それを助けられないだのの展開が待っているかと思ったら、全くそんなことは無く超能力バトルで話はお終い。むしろ期待していた方の切ない話は、どうやら本来の意味でのマクガフィンとして済まされてしまった様である。ちらりちらりと影は見せるが、本編には全く関わってこない。期待はずれと言ってしまうにはちょっと言葉が過ぎるかも知れないが、推薦文を見て自分が期待したほどの話ではなかったと思う。
 そもそも、リセット能力を使ったら、全く同じ三日間が再現される方が無理だろうと思う。わざわざこの事件を切り取らずとも、似たような事件が頻発しそうなものだ。あと、最後の解決策。本当にそれで発動するのか? 主人公死んでても関係無いのか? と疑問。ただ、最初から綺麗に伏線は貼っていたので、全体として全く違和感のないストーリーに仕上がっているのは大した腕だと思う。恐らく、話全体に何か大きな破綻が存在しないと思われる程に綿密に作られた印象。その点は凄く好印象。
 主人公の一人称と、ヒロインの一人称、そして三人称が入り乱れてて非常に読みにくかった印象も少し残る。しかし、単に期待していた話のトーンとは違っていたというだけで、全体には良く纏まっているしそれなりに面白いいい話だと思いました。イラストのカットインのさせ方も少し斬新な感じ。あれ、でもスカートって書いてあるのにイラストではジーンズ履いてた。
 あと、野ノ尾さんはマジストライクなキャラ。大好き過ぎる。

 名言
「そうだな、大きな木がいい」