灼熱のエスクード4 DADDY,BROTHER,LOVER & LITTLE BOY

 大ファンである貴子潤一郎先生の長編が遂に完結。出版は夏だったのに、忙しい時期に重なって読むのが秋になってしまった。
 完結編だからなのか、全体的に非常に駆け足になってる印象。3のアロマが復活する辺りは凄く丹念にやっていた印象だったけど、最後のアロマ討伐戦は非常にあっさり。真澄の復讐も何だか呆気なく終わり、さらには親の仇の魔族が突然協力してくれる展開に。色々と綺麗に纏めようとして、少しご都合主義展開が炸裂してしまった点だけが非常に残念。ただ、直接のさよならは描写されなかったけど、レイニーとの最後が誤魔化される事無くしっかりと迎えられたのは、流石ですと思った。
 ブラディミールの剣がゲートを封じる力があるとか言い始めたときは、「まさかレイニーさん生存のハーレムエンドとか最悪な展開?」と危惧したけど、期待を裏切る事無く貴子潤一郎先生らしい終わり方で、楽しめました。
 薫の成長が、シリーズ全体を通して描かれていたのが印象的。特に、この最終巻での成長ッぷりは異常。けれど、成長した薫も、好きな女性の前ではタジタジになってしまうところがとても可愛くて良かった。ちょっとばっかり女々しいとは思ってしまうけど、そこはキャラの魅力だろうとも思う。最終的にはスーパーヤリチンモードに突入したみたいだけど、ルーシアやヴァルデリーに対する態度の貫き方みたいなのを見ていると格好良く見えてくる不思議。
 トリプル・クラウンも好きなキャラだけど、ルーシアとコンビを組んで行った夢の世界は、いくら何でも便利すぎるよな、と思ったり。ZOSOが凄いっていう説明も込みなんだろうけど、ちょっとばかし便利道具過ぎるというか、ポンポンと世界を救う方法が幾つも出てきたり、敵が味方してくれたりで、どうにもここだけが違和感あり。もうちょっとドロドロした、絶対に助からないような絶望の世界観をこの作品に持っていたので、ここだけは少し首を捻りながら読む。
 挿絵がエロすぎるんだよなぁ……前巻よりかはマシだけど、特にヴァルデリー関連なんか、電車の中で読むには厳しすぎるものがある。挿絵のページにきたら一旦本を閉じて、電車を降りてからこっそりとどこかで読んで、また電車に乗るときに読み始める……みたいなサイクルを繰り返していたのも、読むのに時間が掛かった原因かもしれない。というよりも、そのせいだろう。だがもっとやって欲しい。ともぞ先生最高。
 最終巻だけすこーしご都合主義が入った以外は、やっぱりシリーズ通して大好きな作品。終わってしまったのは寂しいけれど、先生の遅筆具合を考えれば、逆に終わって良かったと思えてしまうかも知れない。でも寂しい。完結するのは嬉しいのに、最後まで読んでしまって作品の世界が終わるのかと思うと、非常に寂しいものがある。マリみてが終わるときには感じなかった大きな喪失感みたいなのが、ハッキリと心の中に巣くった一作でした。
 あ、『パルプフィクション』ネタはすぐ分かってました。

 名言
「たとえ『それはできっこない』と誰かが言ったとしても、例えその言葉通り99%……いや、100%不可能だったとしても、『それでも挑戦を続けるかどうか』だけは自分の意志で決められる。未来は選べなくても、そこに向かうだけの道だけは自分で選択できるんだ。もう僕は傍観者なんかではいない。僕は自分の運命に抗うことをやめない。それが僕が自分で選ぶ、未来の僕の姿だ」

「いや……それが別れというものなのだ。心を痛めるのは死にゆく者ではなく。常に残された者なのだ。わたしがいなくなることに、お前が心をいためてくれているのをわたしは嬉しく思う」