俺の妹がこんなに可愛いわけがない

 いや、これ可愛いのか?
 伏見つかさ作品初体験。

 全力隠れオタな妹の趣味を知ってしまった兄の奮闘記。ところどころに現実のネタを思いっきり出してるけど、いいんだろうか?
 イラストはとても可愛い。設定もありがちだけど楽しめる。けど、これ可愛いのか? という疑問詞がどうにもとれない。正直なところを言ってしまえば、俺はこういうヒロインはあまり好きではないし、主人公の性格設定も個人的にはイマイチ。
 地の文章も口語になっていて、テンポは軽快。ライトノベルらしくスラスラと楽しめていい。ただ、若干設定と口語体の文章が、最近読んだ田中ロミオのAURAとかぶってしまい、秀作過ぎたAURAと自分の中で比較してしまうのは少し反省。全然別の話なのにね。
 話の展開は、やや先が読める。何となくオチが予想出来てしまう。けど別にそれが悪いとは思わない。こういう話は、オチで楽しむ訳じゃないだろうから。
 オタな趣味をひた隠しにする妹に友達が出来る流れは、読んでてとても微笑ましいし、心温まるシーンだった。恐らく、この作品で一番の見せ場だと思う。オタなら多かれ少なかれ経験したことのあるだろう微妙な感じに、「あああ」と思えること必至。現実には沙織のように気配りの出来るオタクって少ないけど、実際知り合いのオタ友達に似たようなのが居るのがまた現実のわからないところ。良い友達が出来て本当によかったね、桐乃。心からそう思ってしまう。
 でも残念なのが、父vs兄の場面で父を説得する材料が弱いかなーと。もう少し何か驚きの戦略を期待していたけど、ここの描写がありがち過ぎて少し脱力。作中の父の描写からみて、そんなことで解決出来る気がしない。もっと「おおっ」と思う解決がみたかったと思うのは高望みだろうか。
 幼なじみキャラが全く生かされていなかったのは、おそらくあとがきにあった別の企画やら何やらで使う伏線なのだろうか? そうでなくては、恐らく作中で一、二を争うナイスキャラが生かせてないのが残念で仕方がない。


 名言
「このままじゃいけないって……何度もやめようって、思った。でも、どうしてもやめられなくて……だってね、ブラウザ立ち上げると、はてなアンテナに登録してあるニュースサイトが、毎日あたしに新たな情報を伝えて、色々買わせようとしてくるんだよ? ……うう、かーずSPとアキバblogめ……」
「――全然わかってない。全年齢版と18禁版は同じタイトルでも、違うものなの」