とらドラ スピンオフ! 幸福の桜色トルネード

 トイレでマッパになれる男、それが北村。
 そういえば買っていたことを忘れていたので、川上稔境界線上のホライゾンを読む前に崩しておくかということで読んだうちの一つ。
 あっれー、本編よりも面白い。本編の四角関係ラブコメというおもしろさの構造が既に崩壊してしまった現状に於いて、あえて直球ど真ん中のラブコメが逆に新鮮で凄く面白かった。
 本編にもちらりと姿を現す超不幸男である富家幸太と、我らがアニキの妹である狩野さくらが織りなす真ッ直線の甘々ラブコメ。大河が出てこないから面白いとか言ったら失礼かも知れないけど、最近は本編が面白くないから。
 幸太の身に降りかかった不幸から手に入れた小さな幸せを、不幸に不幸を重ねながら大きな幸せに変えていく話。全三話構成になっていて、一話が出会い、二話がデート、三話で告白という綺麗な流れで読みやすい。特に最後の告白は、無様に這いつくばってでも戦う主人公が好きな自分としてはとても熱い展開で良かった。ヒロインも実の姉に嫉妬とか可愛すぎる。ああ、もう、お前ら不幸になっちゃえよって言いたいくらい。
 ラブコメは書き慣れてる作家だからテンポも軽快で読みやすいし、無駄に甘いし、主人公は良い具合に不幸だし、アニキと北村も出てくるし、読んでてとても楽しい。いや、実はアニキはそんなに好きじゃないんだけど、アニキに恋してる北村が好きだから良い。トイレでマッパになれる男、それが北村。女子の前でマッパになっても気にしないぜ、それが北村。やっぱとらドラは北村と竜児とばかちーだけで十分だな。
 おまけか何だか知らないけれど、一応大河と竜児が主役の一編も最後に入っている。けど、やっぱ大河はどうでもいい。
 実は表紙を見たとき、竜児の母泰子の過去話かと一瞬思ったけども、違ってとても安心したというのもまたホントの話。

 名言
「だっておまえ、さくらちゃんに近づくんだもん! やめてくれよ! 近づくな! おっ……俺、さくらちゃんのこと、大好きなんだからっ!」
「……どんな不幸が、君を巻き込むかわからないけど……ああっ! もしそうなったら、ごめんね、ごめんね! 頼む、保険に入ってくれさくらちゃん!」