クラウン・フリント レンズと僕と死者の声

クラウン・フリント レンズと僕と使者の声 (ガガガ文庫)

クラウン・フリント レンズと僕と使者の声 (ガガガ文庫)

 おっと、他社の話はそこまでだ
 面白いです。ストーリー構成もスッキリしてるし、起承転結もハッキリと、文章も結構読みやすい。登場人物の数は少し多いかも知れないけど、伏線も上手に回収します。少し大げさに言えば、まるでお手本のようなラノベですが、それらを全てぶち壊しそうな程に主人公が厨二病ぶちかましちゃってるポイントだけが大嫌いです。
 主人公が久々に痛すぎるほど厨二病邪気眼で、少し読むのに難儀する。あと、最終的に世界観を拡張しているのか設定に重みを持たせたいのか、政府とかなんとか出てきちゃった辺りが最高に痛かったですよ。
 でもそれらのマイナスポイントを考えても、普通に面白い一冊。何より、話がすいーっと読めるくらいに良くできている。先日の「どろぼうの名人」が何も考えずにすいーっと読める本だとしたら、これはちょっとだけ考えながらすいーっと読める感じ。自分としては、後者の方が良いかな。
 設定はなんだか「SPEED GRAPHER」みたいでしたが、まあこういうのも面白いかと。何より、カメラに関して専門的な知識を披露しつつも、それを特別押しつけるような姿勢じゃ無かったところが良かった。自分が好きな事柄を延々ぐだぐだと一ページくらいつかってうるさく解説するラノベ(それはそれで嫌いじゃないけど)とかも多々あるけど、カメラの話はするものの多少あっさりと流すか、もしくは必要な解説だけしてしっかり話に戻ってくれるのが胃に優しい感じです。川上稔とか読んで胸焼けしそうなときに読むとスッキリしそう(ただ、どうも主人公の厨二病さに余計に胃もたれしたけど)。
 ガガガの新人賞は相変わらずよく分からない方向に飛んで行ってますが、普通の連載陣は手堅いところを上手く揃えているようで、ガガガの今後に期待できます。
 ああ、あと、こういうあとがきはやっぱり止めた方がいいと思うよ? でも、下にも挙げる名言を見たときは不覚にも噴いた。あとがきだけなら無害なので、立ち読みしたら笑えること請け合い。

 名言
「おっと、他社の話はそこまでだ」