今年とっても自分を楽しませてくれたラノベTOP10

No10
マリア様がみてる 33 ハローグッバイ (コバルト文庫)

マリア様がみてる 33 ハローグッバイ (コバルト文庫)

 ライトノベルの歴史が一つ終わりを告げた瞬間に、今年の暮れに立ち会えたことが少しだけ嬉しかったりの一冊。正直、今年発売されたマリみての中でこの一冊以外は特に今年に楽しませてくれた覚えがないため、通年でこの一冊だけのチョイス。もうネバーエンディングストーリーになってるんじゃないかと危惧していた「マリア様がみてる」が幕を閉じたことは、楽しませてくれた以上に自分の中で一つの大きな事件です。自分がラノベにはまる切っ掛けのひとつだっただけに、尚更その感慨はひとしおというべきか。

No9

 今年の作品ではありませんが、読んだのは今年なので。本編「とらドラ」が既に微妙な感じになっているので、逆に面白かった。何度も言っているような気がするけど、逆転しようと走り回る主人公が好きな自分としては、とても燃えるラストだった。あとはもう好き放題ラブコメやったらこんな感じになりました、みたいな雰囲気。でもそういうのも良いんじゃないかな。

No8
人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

 けっこうな駄目人間の「わたし」によるモノローグで淡々と展開するシュールな作品。今年は「AURA」もあったので、二冊だけの刊行でした。読みやすい全体のテンポと、オタクならついついニヤニヤしてしまいそうな「わたし」の駄目っぷり。そして可愛い妖精さんたち。そんな妖精さんが思いっきり好き放題暴れる展開がもう楽しすぎて、まるで吉本の舞台のような予定調和のコントでも観ている感じになってくる(良い意味で)。三巻の、ぴおんとおやじの正体に少しだけ心が震えたのは、きっと自分が理系ハートだから。

No7

 朱門優ラノベデビュー作かと思われる。一迅社文庫の創刊号に並んでいた一冊。朱門優氏を知ったのは、キャラメルBOXというエロゲブランドの「めぐり、ひとひら」という作品で、非常に長いけどその分面白い物語を書く人だという認識があったため、この一冊を見つけたときはもう無意識に買っていた。
 魅力とアクに溢れたキャラを作ることに関しては田中ロミオと双璧だと脳内で勝手に認定している朱門優だけあって、今作でもどっかおかしいけど愛らしいキャラクターに事欠かない。これだけでも読む価値あり。ただ謎だったのは、約1名ほど何故かメインに関わってこないのに妙に濃いキャラがいたことか……。
 ページが足りない。「めぐり、ひとひら」での殺人的シナリオの長さからも分かるように、もっと書きたいことが沢山あっただろうに。この一冊でこぢんまり纏めてしまうのは非常にもったいないと思う。かといって続編とかいう終わり方でも無かったし、その点が非常に残念。次の一冊は、川上稔ばりに好き放題書かせてあげてください、一迅社の中の人。

No6
龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

 秋山瑞人の新作。続き、出ますよ……ね? それだけが非常に心配です。スイスイ読める小気味良い展開と、わりかしダークな世界設定。キャラ設定の魅力と、続きの気になるラスト。とっても好きです。シェアードワールド作品の様なので、他の作家さんによる作品も期待しています。

No5
とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

 ガガガの本気が感じられた一冊。ラストの展開に若干納得のいかないモノの、ぐいぐい引き込んでいく展開とスッキリした読後感で、非常に爽快な一冊。「これまで名前を知らなかった作家さんの本で、今年一番買って良かったと思ったものは?」という質問を仮にされたら、多分この作家さんの名前を即答すると思います。来年には続編が出るらしいのですが、どうもヒット作の続編、特に最初は一作の予定だったのにヒットしたから急遽続編を作った、というものに対して良い思いを持っていない自分としてみれば、非常に心配でなりません。

No4
RD 潜脳調査室 Redeemable Dream

RD 潜脳調査室 Redeemable Dream

 ライトノベルとしても、サイバーパンクとしても、文句なしのおもしろさ。シロマサ作品の文章化はこれまでにも攻殻機動隊を始めとして複数ありましたが、この一冊には敵いません。シロマサ作品としては設定にかなり違和感のある部分も見られましたが、全体としての完成度が高く、また単なるアニメRDのノベライズに終わらず終始オリジナルストーリー、オリジナルキャラクターで展開していったところも高評価です。設定が分かりにくいことに定評のあるSF全般ですが、今作はアニメというビジュアルがまず先行しているので、SF初心者にも非常に読みやすいと思います。ある意味で、サイバーパンク入門書として人に勧めたいという感じもします。まず攻殻機動隊SACやMATRIX等の映像で引きつけて、次にRDを観させて、そして本作を読ませ、ゆくゆくはギブスンやスターリングなどのサイバーパンク黎明期作品に染めていく……完璧です。

No3
灼熱のエスクード―MATERIAL GIRL (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード―MATERIAL GIRL (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード2  LADY STARDUST (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード2 LADY STARDUST (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード3  I WILL CATCH U (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード3 I WILL CATCH U (富士見ファンタジア文庫)

 エスクードシリーズのタイトルが煉獄から灼熱に変わった第一作目が今年の頭に発売されましたが、これまでの遅筆ぶりからは想像できないペースで、なんと年三冊。遅筆でも待っている時間は楽しいモノでしたが、やはり早くて内容も伴っているに超したことはありません。
 ライトノベルとは思えないほどに重々しい雰囲気と筆力で、読むのにそれなりの気合いと時間が要りますが、それが無駄にならない面白さ。基本的に敵も味方もド外道な感じで後味もきついですが、圧倒的な文章力と世界観が読者を引きつけて放さない。そして俺もアロマ様に慰みものにされた後に殺されたい。ハァハァ。この文句なしの面白さにも関わらず、なぜか知名度は低め(あるいはライトノベルに求められている、一種の"軽さと萌え"が足りてないのか)なので、来年はもっと注目されれば嬉しいです。

No2

 正直一位にしたかったけれど、今年は今作を更に上回る怪物が居てしまったため、自分でも残念ながらの二番。二番といえど、とんでもない面白さ。川上稔ラノベは合う合わないがあるとよく言われますが、がっちりど真ん中ストライクの自分にとっては、この鈍器と呼ばれる一冊だって、お宝の紙の束に見えます。初っぱなから700Pオーバーとかかなりの暴挙に出ていますが、ファンとしてみれば「むしろもっとやれ」みたいな感じです。
 ネイトさんです。ネイト・ミトツダイラ姉さんが最高だと思います。冬コミではちらほらと「境界線上のホライゾン本」も見かけたので、ネイトさんが表紙の本を買いました。次いで本田・二代、本田・正純の本田コンビが大好きです。相変わらずの熱いストーリー、山のような変態、癖になる文章、鈍器な本体。また来年も本棚を黄色い背表紙の本で埋め尽くす作業が始まるのかと思うと、ワクワクが止まりません。

No1
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

 今年読んだ中で、そして今年度のラノベの中で最高峰の楽しさでした。流れるようでいて決して薄くないストーリー展開と、ラストのテンションがたまりません。田中ロミオはやっぱり才能有り余ってると、改めて感じさせてくれる、最強の一冊でした。同レーベルから出ている同じく田中ロミオ氏の「人類は衰退しました」も秀逸ですが、この一冊とは比べるまでもありません。
 まずヒロインがガチ邪気眼という設定からして読んでいてムズムズするのに、それを眺める主人公が脱邪気眼の高校生というのがまた、既に邪気眼を卒業した読者達のハートをがっちり鷲掴み(爪も食い込んでる)だったことは間違いありません。リアル邪気眼のヒロインに振り回され、邪気眼がどんどん湧いてきて、最終的にはみんな自分たちの心のどこかにあった邪気眼を認めるという展開が、最高の爽快感です。
 確か、昔のテックジャイアンに付いていた小冊子で、ロミオ氏が新作の「霊長流離オクルトゥム」について語っていたとき、「自分は地面を這いつくばる主人公が好き」という事を言っていたのを読んで、心の中で凄く同意した覚えがありますが、ロミオ作品の主人公達は本当に地面を這いつくばって、みっともなくとも走って、そして戦うという格好良さを持っている。今作も、その例に漏れず、素晴らしい決着だったと思う。ラストシーン間際の、過去に封印したコスプレを引っ張り出してきて、俺たちはみんなこうだった! と説得するシーンが、スピード感と緊張感と必死感があふれ出していて素敵です。最後はみんな邪気眼を卒業していくけれど、みんな心の中にはドキドキワクワクを夢見て生きているんだ、というオタクの小さな共通テーマみたいな物を垣間見られた気がして、最高の読後感でした。