俺の妹がこんなに可愛いわけがない 3

 完全にネタノベルと化している気もするけど、普通に面白いから困るんだよなぁ……。前回までのオチが非常に弱い弱点も多少は克服しつつ、三巻は結構良い仕上がりになっているのではないかと思う。
 面白いんだよなぁ……本当に。キャラ萌えとか、シチュ萌えとかそういう方向性無しの面白さで、単純に話として面白いから、このシリーズがネタ的作品として扱われるのには何か納得がいかないものがある。まず、各キャラクターが非常に魅力的。桐乃はよくある完璧超人主人公(まあ、主人公ポジションではないけど、そんなもんだろ)。黒猫は正にネット世代のオタクの写し身。沙織はズレてる一般人担当。真奈美は癒しキャラ。主人公は……なんかこいつだけ気にくわないけど、劣化キョン? とりあえず、キャラ小説としても楽しめるし、話をちゃんと追ってもそれなりに楽しめる。とくに、オタク的コミュニティに対する自己批判というか、何というか、作者これ書いてるときすっげー楽しい反面苦しいんだろうなーとか思えてしまうこの感じは、やはりネット世代のオタクが培った感性なのだろうか。非常に良いツボを突いていると思う。
 黒猫が、非常に読者に近いところに居る気がして、とても楽しい。むしろ、AURAと一緒で、読者が既にそのステージを通り越したからこそ、心から黒猫に対して共感が出来るというのが面白い。そして、作中に自分たちと同じポジションに立っている傍観者としてのフェイトちゃんが出てくるからこそ、どちらの視点でも楽しめる価値観の相違が面白い。どっかのガンダムパイロットみたいな名前のフェイトちゃんだけど、絵を見る限りでは良い感じのおばさんですね。とにかく、黒猫の価値観こそが、現役ライトノベル世代の中高生には心地よく感じ、延命ライトノベル世代である二十代には懐かしく感じる。この感覚をどちらからでも味わえるというのは、とても良いと思う。ネタ小説的に扱われているけれど、このシリーズはかなり評価に値すると本当に思う。AURAと同等まではいかないけれど、厨二病を振り返るための小説としては、非常に良い。あえて名言には選ばないけど、黒猫の持っている創作に関する哲学というのは、本当にオタク臭くて良いと思う。俺は大好き。同じワナビとしてもね。
 ところで、ほとんどの固有名詞はそのまま名指しで登場するのに、何でケンタッキーだけ伏せ字なんだろうか。
 しかし、ωと書いて「こーんな」と読ませてしまうルビは嫌いじゃないぜ。

 名言

「……に、兄さん……マジキチよマジキチ……」
「……しっ、聞こえたらどうする……」