パラダイスロスト

パラダイスロスト (メガミ文庫)

パラダイスロスト (メガミ文庫)

 面白かった。新人なのに妙に筆がしっかりしてると思ったら、放送作家か記者か何かの出身の人らしい。面白かったんだけど、握力75kgもある女って、どう頑張っても非常に怖い感じの体つきな気がするんですが、間違っても地味に学園生活送れるような体格じゃないと思うんですが。
 超強い主人公のヒトミと、お姫様ヒロインの理沙の一日の冒険? というかなんというか、そんな感じ。理沙が超能力っぽい謎能力を持っている設定なんだけど、その根拠が全く無かった辺りが多少謎。話はなかなか王道を突っ走っているようで面白かった。綺麗な起承転結だったし、見え見えだったけどクライマックスの二段底の構造とかセオリーに忠実だった。安定して面白いと思う。
 ただ何だか妙に気になって仕方なかったのが、バイクのエンジンをふかす音がカギ括弧の中に入っていたこと。というか、擬音系は全部カギ括弧の中に。エンジン音が「バルルーン」とか、拳銃の発砲音が「パーン」みたいな感じ。どっかのエロゲで似たような現象を見た気がするけど、これは良くないと思うな……。なんというか、とっても間抜けに見える。え? バイク喋ってんの? みたいな感想を抱きたくなってしまう。
 オチとかもべたべただったけど、これも王道突っ走ってて良かったと思う。教科書型の良作という印象。不良をボコボコにして惚れられるというのも王道だし、死んだ人が生き返るのも王道だし、とにかく直線ど真ん中ストレートのエンターテイメント。良いと思う。ややキャラクターの内面描写が薄いと思ったけど、それは単に好みの差かと。
 クスリやってるキャラが一名出てくるけど、その描写がなんだか妙に教科書的というか、薬物乱用の事例とかを丁寧に調べて書いたんじゃないかな、と思える様な著者の生真面目さもなんだか感じる。これに関して言えば、教科書的な描写はかえって面白く無いとは個人的に思うけど。
 全体を通してひたすら直線。良い感じに突き抜けてくれそうな作品でした。次回作も期待。

 名言
「あいつがどんなに強くたって……敵が悪魔だろうが、悪魔に取り憑かれた犯罪者だろうが……わたしがやらなきゃいけないことは、最初から決まってる」