2009年を振り返って

 今年のラノベを振り返ってみます。
 今年一番のニュースは、やはり六年ぶりに現れた角川スニーカー大賞だと思います。ニュースを聞いたときは、「また角川が売れないからって生き残りに必死な話題作りか」とか失礼なこと思ってましたが、想像を遙かに超える出来でビックリしました。個人的に、スニーカー文庫ファンタジア文庫は完全にブランド力が失墜したものと思っていましたが、単なる思い違いだった様です。老舗の本気、侮り難し。
 古参も多少の巻き返しがあり、そして新参も相変わらず面白いことをやっていると思いますが、どうしても電撃の一人勝ちの構図は今年も崩れず。しかし、何だか電撃も毎月三冊の単発を保証しているとはいえ、知名度の高いシリーズのみに重点をシフトし始めた時期のような気もします。このまま古参のレーベルのように巨大な恐竜と化してしまうのか、はたまたこれから何か動きがあるのか。しかしやはり、電撃の有するタイトルのブランド力は並外れているため、そうなってしまうのも仕方のないことなのか。しかしその一方で、既存のビッグタイトル作家に新しいシリーズを書かせてみることにも意欲的な事が少し分かった今年。電撃は、タイトルのブランド力ではなく、作家名のブランド力で勝ち残る方向へ進んでいるのかも知れない。案外、来年辺りが何か興味深いターニングポイントになったりしないかとも思っています。
 新参者たちも増えました。まだ読んでないけれど、アスキーメディアワークス文庫は、確かに大人のライトノベルファン、それも自分のような二十代前半ではなく、三十代前後の人たちを捕らえて離さないラインナップだと思います。どちらかと言えば、二十代前半の世代は取り残されてしまった感がありますが、既存のレーベルでも新しいレーベルでも充分にカバーされている範囲だと思っているので、これから先のライトノベル高齢化が更に進行するのか、それとも今のまま踏みとどまるのか、中間の立場から興味深く見ることが出来ると思います。個人的に、ライトノベルプログレッシブな立場で居続けて欲しいと思うので(というよりも、プログレッシブな小説をライトノベルと呼ぶモノだと個人的に思っているので)、高年齢層はカバーしつつも、メインをそっちにシフトしていく流れは歓迎したくありません。多分そんなことは起きないとは思いますが。
 ネットとライトノベルの融合を去年は思っていましたが、思いの外目立った動きはありませんでした。むしろ、言ってる本人ですらどんなことが出来るのか全く予想していないので、無責任に言っているだけなのですが。既に大規模な書評サイトは複数存在し、ポータルやアルファブロガー達による宣伝効果も一定の効果を見せているし、ライトノベルの中に現実のネットの話を織り交ぜる作品も少なくなくなりました。あともうちょっと何かやろうとすれば、なにができるかなーとか考えるのも、SFチックで楽しいかも知れません。
 今年のライトノベルは、やや停滞気味だったと思います。一つの大きな流れだったスニーカー大賞も、話が非常に面白く筆力が強いという点で評価はとても高いですが、何か新しい風穴だったとは思いません。その他の新人賞も思いの外パッとせず、ビリビリくる何かを感じる作品はありませんでした(読んでる数が少ないからかもしれませんが)。既にライトノベルというジャンルに風穴を沢山空けすぎて、次はどこに風穴を空ければ良いのか、誰もが迷っている状態なんだと思います。その次の風穴を空けてくれるのは、果たして誰なんでしょうか。2010年のライトノベルが、更に進化していけば嬉しいです。
 来年も良いお年を、そして良いラノベを。