灼熱のエスクード2 LADY STARDUST

灼熱のエスクード2  LADY STARDUST (富士見ファンタジア文庫)

灼熱のエスクード2 LADY STARDUST (富士見ファンタジア文庫)

 ちくせう、可愛いじゃねぇか。

 やっぱり貴子潤一郎は天才です。12月のベロニカを表紙買いして本当によかった。
 煉獄シリーズから灼熱シリーズに入る第一作目だった前作があまりにも脱力感のある一作だったのに対して、巻き返しを図ろうとでも言わんばかりの熱い今作。まさに灼熱の一冊。AURA、DRAGON BASTERと並んで、今年一押しの一冊。
 様々な人物の自己と葛藤と欲望が渦巻き混ざり合い、緊張感のある流れ。ドキドキするような描写を一冊通して読もうと思うとなかなか疲れるものだけど、良い具合にスラスラいけます。遂に大きく動く事態に、煉獄一冊目からワクワクしてた気分はどんどん高まって大変なことになりそう。
 薫はなんだか人が変わったように成長した様に思えた。前作でどこか達観したのか、なんだか少し薫らしくないという気もなきにしもあらず。というか、あなたそんなに強かったっけ? と言いたいくらい。でも、あとがきでも書かれているように、ついに傍観者だった薫が渦の中心に巻き込まれていく。この流れは熱かった。でも何となく格好良く成長したな、薫。後半には男気も炸裂で、弱体化した前作に比べて大成長。がんばれ薫、負けるな薫。
 レイニーさんは、前作で少し孤高の戦う姫の印象が削がれたものの、今作ではピンチに駆けつけ大活躍。しかし、ラストには彼女らしくなく、ミスを。ゴルゴ13も言ってました。勝てるときに余計な口をきいている暇があるなら、引き金を引けと。灼熱シリーズに入って弱体化してますね、なんだか。ここだけが残念なポイント。
 今回は真面目なクラウディア一門の姿を垣間見られたのも、とても良かった。いつものクソがつくほど人格ひん曲がったお師匠さまと、天ボケ連発な弟子姉妹の織りなすカオスワールドは、全体的にダークな今作の清涼剤。でもツンツンなルーシアも捨てがたい。ついに今回デレたしなぁ……ちくせう、可愛いじゃねぇか。
 前作に引き続き、『トリプル・クラウン』も登場。相変わらずの外道っぷりに加え、姿初登場のトゥロワヌやその他魔族も含め、こいつはクセェーー、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ! と思わず叫びたいほどのクソ外道ども。おまえら死んでしまえ!
 我が君ことアルフェムが意外に真面目に色々と考えている姿も見られるし、それに順応していく真澄さんの自己嫌悪っぷりも炸裂。しかも根っからのショタコンであるアルフェムの性技は、フランスの美少年にも容赦しない。外道過ぎる。そしてまさかの、我が君巻末のおまけに登場。
 パンク野郎も再登場で、なんだかオールスター戦みたいだったなあ。
 そしてストーリーはついに大きく転がり始め、薫を待つ決断の時が近づく。アロマは現世に帰り咲き、次なるレディ・キィがレイニーであることが発覚し、ルーシアの人格は奪われる。熱い、熱すぎる。基本外道ばっかりのこのシリーズで、どうすっきりさせてくれるのか、早くも次巻が待ち遠しくて仕方ありません。
 残念だったポイントは、レイニーさん弱体化と、全体的に話が大きく動くためにやや説明的な文章が多かったことくらい。特に後者は、新しい単語とか設定がいくつか連続出てきて、少し大風呂敷広げすぎな気も。SF好きで慣れてる自分は全然気にしませんが。あとは、ちょっと一巻からの間が長かったせいもあり、ブラディミールがらみとかハーシュハイザーとか、幾つかの設定を思い出すのに苦労しました。
 それにしても、本当に次回作が本当に楽しみで仕方ないシリーズです。
 そういえば、実在でご存命の女王を作中に登場させるって、いいんですかね?

 名言
「僕が取り返すよ。君の命と、もう一人の君を」


 あまりにも傑作なので、デビュー作も同時に紹介。

12月のベロニカ (富士見ファンタジア文庫)

12月のベロニカ (富士見ファンタジア文庫)