ほうかご百物語2

 一番の萌えキャラは奈良山だよね
 第十四回電撃大賞の続編。大賞受賞作であるほうかご百物語は、成る程これは大賞向けだな、と何となく納得してしまう様な妖怪の知識を上手く使った手堅い作りだったが、今作はそれが少しあだになってしまった印象。
 あまりにも手堅すぎて、どうにも話が盛り上がらない。決してつまらないという意味で言っているわけではないけれど、なんだかこうぐぐっと引きつけられるような強さは無かった。学園異能物なのか、ラブコメなのか、妖怪豆知識なのか、どうもジャンルが読み手としての俺の中でハッキリしないことも一因なのかも知れない。そもそもが五つの章の短編からなる本なので、それで盛り上げろと言うのも無理な注文というのも分かる。確か、大賞受賞作の前作も四つか五つの短編で一つの話になっていた気もするけど、前作と違って各章の間に時間経過があるというのも大きそう。
 厨二病的な力や少年漫画的な熱さがそんなに嫌いじゃない自分としては、いたちさんの鎌鼬が刀として具現化するアイディアはとても面白かった。こう書くと学園異能物のような気もするけど、でも少しラブコメってるし、うーん。
 新キャラは弱いです。キャラが。もっとこう、帯の煽りにもあるとおり、いたちさんのライバル的ポジションに収まるのかと思ったら、決してそんなことはなく。正義が突っ走る真面目なボクッ娘です。真面目なボクッ娘って好きな取り合わせなんだけど、なんだか全体的に活躍してないから印象薄かったな。
 あと、主人公とジャージ先輩が良くない意味でダメ人間やってるのも、盛り上がらないと感じてしまう要因の一つである気がする。狂言回しの先輩は、キャラが立ってるようであまり立ってないし、主人公はモノローグがやかましい。特に、()の多用が好みじゃない。
 伏線の張り方は、上手だと思う。二つの事例を用意して、あらかじめその両方を説明しておきながら、さもそのうち一つを重要のように取り上げてもう一つをさらっと流す。そして最後の最後でもう一つを取り出す方法は、違和感なく伏線を張る技術としては凄くナチュラルで素晴らしいと思う。
 盛り上がりは無いと言ったけど、話自体は全体的に非常に手堅く、読んでて退屈はしない。ある意味では、オタクの自分にはあまり向かない作品で、ライトノベルという物に興味がない一般人の人に読ませるのに向いている作品かも知れない。嫌いではないです、でも好きかというとよく分からない、という作品でした。
 一番の萌えキャラは奈良山だよね。

 名言
「ううん、おら討ーたん。猿だけに!」