恐るべき子供たち

恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)

恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)

 エリザベートはまさにヤンデレ
 この本を読んだ(読もうと思った)理由が、タイトルがかっこよかったので思わず、とか言ったらいろんな人に怒られそうな気もするけれど。
 ジャン・コクトーの代表作。以前から新潮社版を買おうか買うまいか悩んでいたが、光文社の古典新訳で出ていることを知って思わず衝動買い。
 弟のポールと姉のエリザベートを中心とした、残酷で不器用な四人の子供たちが繰り広げる悲劇。読む前はあらすじだけを見て「ライ麦畑でつかまえて」系の話かと思っていたけど、読んでみると少し違った。ライ麦畑はホールデン少年の青臭い皮肉とイノセンスな自分の旅だったのに対し、恐るべき子供たちはただひたすら自分たちを殻に閉じ込め続ける、大人になれない子供たちの話という印象が強い。
 劇中ではポールもエリザベートも結構いい年になっているのにも関わらず、この二人は悪い意味でずっと子供。そしてその子供ならではの不器用さが招く愛を超えた何かが、残酷な結果に終わってしまう。非常に後味が悪いけれど、こういう話は大好きだ。
 それにしても、ジェラールが不憫で仕方ない。中二病に片足を突っ込んだまま抜けきれないポールに振り回されたあげくダルジュロスのせいでポールに気持ちを気づいてもらえず、弟大好きが高じてツンデレからヤンデレへと進化を遂げた狂気の女エリザベートに恋しても報われず本人もそれを理解しており、最終的にはエリザベートに利用されて特に好きでもないアガートと結婚させられる、エンディングには名前すら出てこない。間違いなくこの四人の中で一番大人であり、一番良い奴であり、何とも不幸な奴だった。ジラフ、なんて哀れな奴。
 しかしこうして文字にしてみると、エリザベートはまさにヤンデレとしか言いようのないキャラだなぁ……

 名言
「そのとおりよ。嫉妬していたの。あなたを失いたくなかった。アガートが憎い。アガートがこの家からあなたをさらっていくなんて、許すことができなかった」