GENESISシリーズ 境界線上のホライゾンI

 川上稔はテンションあがる! 相変わらずクソ長くてライトノベルどころかヘビーノベル作家なんて言われるほどクソ分厚い本を量産する川上稔だが、長すぎて読むのに時間かかって仕方ない。仕方ないから電車の中で通学中にちまちま読んではいるんだけど、それでもストーリーのテンションが維持できる川上稔のテンション維持術は凄いと思う。
 しかし維持されるのはテンションだけで、設定がどうも頭に入りづらくて仕方ない。設定を追おうと思って熟読するとまた時間がかかるのスパイラル。先月の電撃マガジンを買っていた友人が羨ましくて仕方ない。
 今回の主人公は「超無能」こと葵・トーリ。前作の主人公が超エクストリーム入っちゃったガチ変態を一巻から大公開していた佐山・命だったのに比べれば、今作は少し主人公の影薄め。ってか、主役を差し置いて先生目立ちすぎ。しかし影は薄くとも、設定に影がありそうなので、今後のトーリ君に期待です。ところで、通りゃんせ=とおりゃんせ=トーリゃんせ?
 最高の見せ場は、序盤の朝っぱらからヤクザ事務所襲撃と終盤の忠勝vs宗茂。どっちもスピード感抜群の戦闘だけど、疾走感の強いヤクザ事務所襲撃と、重厚感のあるじじいvs金髪のどっちも違った楽しみが出来て最高。しかしそれにしても、オリトライ先生、あなたもしかして風見っていう名字にご縁でも……
 ヒロインは自動人形のP-01s。彼女が第九の大罪武装と分かったときのP-01sとトーリと正純のやりとりが切なくてたまんねぇ。前作のヒロインであるガチセメントふたなり(?)新庄・運切とは違って、おとなしめのキャラ設定なのだろうか? そういえば新庄君のガチセメントで思い出したけど、今作はエロい要素少なめかも。いいぞもっとやれ。
 川上作品の相変わらずな点というか、設定がイマイチ素直に頭に入ってきてくれないのと、描写で場面が想像しづらいところは相変わらず。だがそれがいい。欠点は、ちょっとキャラ数多すぎて何が何だか分からなくなるところだろうか? 終わりのクロニクルでもキャラ数多すぎて分けわかんなくなってたけど、それは後半の話だったから、一巻からこの飛ばしっぷりはちょっと不安になる。すでに誰がシロジロで誰がネシンバラで誰がハイディかよく分からん。というか、キャラクタービジュアルがぱっと頭に浮いてこない。まあ、分からなくてもあんまり進行には関係ないのかも知れないけれど。
 待ちに待った川上稔の新シリーズ、これでまた俺の本棚が黄色い背の分厚い電撃文庫で占領されていくわけですね、わかります。上巻の終わり方が凄く続きが気になる終わり方だったから、買ってすぐ読まずにしばらく寝かしておいて正解だったかも知れない。下巻が超楽しみ。
 それにしても、こんなに名言選ぶのが難しいラノベもそうそうあるまい。

 名言
「ええ、私が、――この胸を貸しましょう」
「正純様も……私が誰なのか、どうすればいいのか、答えられませんか」
「昔、こう言ったら笑ったよなあ。――見ろよ、月は既に二つに割断されてるんだぜ、って」