二人で始める世界征服

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

 主人公が大きく成長しているのが非常に好印象だった
 審査員特別賞の帯に惹かれて購入。こうはっきり言うのも少し気が引けるが、正直つまらない。
 まずオチが見え過ぎている。赤ずきんの正体が最初から見え見えだった。そして話が盛り上がらない。銀行強盗にしても誘拐にしても立てこもりにしても、話がのほほんと進みすぎてイマイチ緊張感がない(というか、そういうぬるい系のストーリーなら良いんだけど、それすらもどっちつかず)。そして何より、"最悪の事態"を全力で避けてしまっている作者の書き方が、あまり好きにはなれなかった。どんな話にせよ、何かしらの"最悪の事態"に直面した主人公たちがその逆境から逆転するという形が、大なり小なり組み込まれているのが起承転結の転結にあたると考えている自分としては、ずーっと最悪の事態を調子よく回避して、何となく起こった面倒ごとを、主人公たちのスーパーパワーで強引に解決しているように見えて、全然盛り上がらない。「うわー、次どうなるんだろ」みたいなわくわく感が全く無かった。ラストの展開も、とんでもなくご都合主義で、読んでいてあまりにも脱力。伏線も張らずにそりゃ無いだろう、と心底思った。
 わくわく感が無いのであれば、せめて純然たる萌え小説であって欲しいモノだが(あるいは「かのこん」レベルまでやってくれれば、それはそれで清々しいものがある)、イマイチ萌え小説とも感じない。どのキャラもそれなりに暗いバックグラウンドがありつつも不透明で、キャラが立っていないというのが印象。単なるツルペタやきわどい衣装だけで萌えると思ったら大間違いだと思う。属性というのはあくまで属性であって、それをどう生かすかは、その属性をまとうキャラに掛かっていると自分は考える。属性だけ付けておけば、自動的にそのキャラのステータスが上がるというのは間違いだと思う。勿論、属性を付けることでステータスは上がるが、それはまずキャラがハッキリしているという前提が必要だ。
 良い点はあまり思いつかない。敵の目的も味方の目的も共に非常に不明瞭で、ストーリーが進んでいる気がしない。設定とは別に、現実世界の描写が非常に非リアルで、日常ファンタジー感がない(主人公がドラゴン改造手術を受けたりする設定は面白いとは思う)。全体を通して、主人公のモノローグにムラがありすぎて、読みづらい。ただ、それらの中でいいと思った点は、主人公が姿を変えることで自分を成長させているという描写があった点だとおもう。主人公は、最初はドラゴンになった自分の姿に合わせるために、芝居がかった口調をしていたけれど、段々とそれが主人公の性格に反映されてきて、最終的には主人公が大きく成長しているのが非常に好印象だった。別のペルソナを手に入れた主人公が成長する様は、なかなかに見ていて楽しい。
 ホントに自分は単なるラノベ好きであって、曲がりなりにもプロの先生相手にこんな偉そうな文章を書くのは非常に申し訳無い気持ちで一杯だけれど、全体ではやっぱりつまらなかったと思います。すいません。

 名言
「……二九一番だそうです」