ぴにおん!

ぴにおん! (MF文庫J)

ぴにおん! (MF文庫J)

 今年のMFの佳作の中では今のところこれが一番好きです
 意外な面白さ。オチの弱さ、というか全体的に文章がすんごく誤魔化し入ってる気がするけど、まあそれも味と言ってしまえば味なのかも知れない。
 まずスタイルが延々モノローグ。キョンの語彙を半分にして、嘘をを四割り増しくらいにした感じの語り口。しょっちゅう話をひっくり返して読みづらいかと思っていたけれど、意外にスラスラと読めたのは好印象。というか、モノローグスタイルの話は基本的に人の話を聞いてるのと同じだから、よっぽどアレじゃないかぎり読みやすいと思うし、作者も書きやすいだろう。
 ストーリー展開は、思いの外意外性があってよかったけれど、まあ何というか、オチは大方読めていた。伏線は張ってあったけれど、どうも名前に数字が入るってのは絶対的条件じゃないらしいし、イマイチ説得力には欠けるか。キャラは実に王道的な設定のキャラが多いけれど、それぞれキャラがよく立っていて、読んでいて楽しかった。というか、二葉のツンツンツンツンツンツンツンデレ感が割と良いバランス。あとは、自分の孤高のヒロイン好き補正がかかってよく見えてる可能性もあり。
 若干、設定のいい加減さが見えた。二葉の副作用はきっちりと伏線張ってあったけれど、それ以前に動物の声が聞こえるのも能力なら、常時発動しちゃってるはずなんじゃないの? と素朴な疑問。ヒロイン達が何で全員「男の超能力者が生まれない」ルールと、「能力が消える」ルールを知っていたかの説明もはっきりとされず(ニーナは説明あったけど)。というか、主人公も知ってる可能性の方が高いんじゃないのかその設定。ついでに、主人公の頭の具合も謎。相当バカ設定らしく、フロイトの名前どころかコーラン(最近原語に近づけてはクルアーンと言うらしい)すら知らなかったのに、メランコリーとかいう単語を知ってたりとか時々知的な事を言ってるために少し混乱した。
 全体的に、テンポ良く進むストーリーと軽快な語り口と萌えるヒロイン達のおかげで楽しく読めました。ついでに、いくらでも続編が書けるなこれ、とも思ったり。出たら買う。ただ、どうも文章力の弱さを誤魔化している感じが少しするので、数作書いて慣れてきたらもっと面白い事になると思う。
 まだ全部読んでないけど、今年のMFの佳作の中では今のところこれが一番好きです。一番伸びしろがあると思う。

 名言
「だから、それは…………そうゆう感じの能力だろ」
「そうか。そうゆう感じか」