この広い世界にふたりぼっち

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫J)

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫J)

 去年の新人賞佳作、最後の一冊。発売されたのは四つの佳作の中で一番最初だったはずだけど、すっかり忘れていたので今頃読了。イラスト七草ってところも素敵です。
 終始「んー、ん?」って感じで読み進めました。面白くは……無いかな。ちょっと。あとがきで作者がテーマみたいなのを語っていましたが、自分はあとがきよりも先に本編を読むタイプなので、いまいちそのテーマに気づけませんでした。というよりも、何もかもが中途半端な気がします。同じくあとがきによると、どうも「北欧神話」を元にして書かれたらしいのですが、なんというか、不親切、かな。狼が喋るのに理由を付けろとか野暮な事は言わないけど、女神様はなんだったのか、司やアロハシャツのおっさんが何で出てきたのかとか、何の前触れもなく魔法使いとの異能バトルになってたりとか、話の進み方がイマイチ斜め上でうまくついて行けず。
 あるいは、「北欧神話」のフェンリル(本当にフェンリルなのかは知らない、想像。でも北欧神話の喋る狼っていったら、フェンリルしか知らない)の話は、女神やアロハのおっさんに相当するキャラが出てきたり、魔法使いが出てきて異能バトルをするのかも知れない。しかし、「古事記」や「新約聖書」みたいな大抵の人が大筋の話を知っているものとは違い、「北欧神話」の全体像って日本ではあまり一般的ではないと、個人的には思う(単に自分が無学なだけかもしれないが)。その一般的ではない話を下地にして、何の解説も無しに「分かってるでしょ?」みたいな話の進め方をされると、ちょっとついて行けない。もちろん、分かる人にだけ分かる話ってのも否定するわけではないけれど、それを全体の大筋に使うのは少しどうかと思う。「北欧神話」をなぞる上で必要だったのかも知れないけど、ラノベとして読むには不必要なキャラが多すぎる。
 とまあ、大げさに書きはしたものの、実際に「北欧神話」が分からないと理解できないのは女神とアロハのおっさんと突然出てくる魔法使いだけで、それ以外はスラスラっと読める。主人公やその周りの登場人物に関してバックグラウンドを一切明かさないことを徹底しているのは、悪くはない。ただそれにしても、何もかもが中途半端な感じで終わってしまったのは、少し拍子抜けだった。自分が好きなタイプの中二病邪気眼ではなく、嫌いなタイプの中二病邪気眼なお話でした。
 MF新人賞佳作を自分的面白さ順で並べると、ナイン>ぴにおん>ドルイド>ふたりぼっち の順になりそう。一般的には、 ドルイド>ナイン>ふたりぼっち>ぴにおん って並びになりそうだけど。

 名言
「素敵な欺瞞ですね」