アクセル・ワールド1
- 作者: 川原礫,HIMA
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/02/01
- メディア: 文庫
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今年の電撃大賞。いきなりで失礼だけど、これ本当に大賞? 本当にいきなりで失礼だけど、巻末のカワカミ汁による解説の方が面白かった……思うに、これまで電撃文庫には本格的なサイバーパンク系のヒットが無かったから、これが選ばれたのではないかと邪推してしまう。
サイバーパンクとは言ったが、恐らく意図的にサイバーパンク的世界観を抜け出てみようとしたであろう作風。つまり、あまりサイバーパンクっぽくない。何かと言えば、作中でも主人公が言及しているとおり、世界が綺麗過ぎる。ライトノベルとサイバーパンクの折衷案としては、ちょっとライトの方に傾きすぎている印象。あるいは、この間の「エヴォリューション」と同じで、SF映画を観て書かれたんじゃないかなーと思ってしまう感じ。ただ「エヴォリューション」と違うのは、世界設定がマシな点。「エヴォリューション」がホントに映画的SFだったのに対して、文章的なハードSFの要素も少し見えたりする。しかしどうにも、設定上の年代はインプラントによる電脳技術を通り越した時代らしいのに、それらしい描写があんまり作中に出てこなかったところが心残り。
ブラックロータスって名前は、恐らくマジック・ザ・ギャザリングのカードからかと。最後に「黒の睡蓮」でルビ付いてたから、多分間違い無い。けど六王の設定とかでギャザに存在しない色とかあったし、考え過ぎか。
主人公の設定がヒジョーに気に入らない。なんだよ、いじめられっ子でピザってて人から嫌われてるのに、可愛い幼なじみが居てフツーに接してるって。そんなやついじめられっ子にならねーよ、多分。少なくとも女子グループと敵対しなければ、男子からの攻撃の抑止力にもなるだろうに。幼なじみに嫉妬してるわけじゃないぞ、単に設定的に無理があると思ってるだけだからな! 絶対だぞ!
お互いに有線したらセキュリティだだ漏れっていう設定も妙な感じが。あと、患者はモニタ機器も含めてスタンドアローンにしなきゃいかんだろ常考。これは単に自分の専攻が情報工学なだけだからかも知れないが。
全体的にストーリーも微妙な感じ。ホントに失礼な言い方だけど、大賞とは思えない。SFなら、隠されたパワー解放! とかじゃなくて、もう少し理屈責め(例えその理屈がよくわからんでも)で勝負してるのを期待してた分、拍子抜け。
名言
「さ……さんじゅっせんち、です」
「…………ふーん」