ヴァンパイアノイズム

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

 話の中心というか、テーマというか、最期の方に語られる延々とした話は、まあ誰しも中学や高校で発病する病気なんじゃないかな、と思ったり。自分は高校の時から。それを実際に文章に起こしてみるという試みは良かったと思うし、共感も出来たのだけど、いかんせん文章が好きになれない。そして、特になんの解決もなく投げっぱなしなラストが気に入らない。
 自分が死んだらどうなっちゃうんだろう病は、たまーに今でもぶり返すし、凄く怖くなって眠れなくなる(最近は、カイジの再放送で鉄骨渡りの時の利根川の名台詞で再発した)。その気持ちをそのままラノベにぶつけるというスタンスは良いと思う。とても共感できるし、面白い。だがしかし、ヴァンパイアってなんなのよ。それ以前に、話が完全に投げっぱなし過ぎて、せっかくの良い題材がなんの調理もされずに転がっている感じ。かといって続編を出す価値も無さそうだし、一体どうしたものか……
 文章力が変。この人の作品は未読だけど、結構な人気シリーズを何本か出している記憶がある。ベテランのハズ、なのに、何だかスカスカすぎて中身が感じられない。地の文が説明口調だし、句点を挟んで反語を使うし、体言止めの連続使用が上手くないし、極端に短い台詞の連続が多すぎてテンポは良いけど内容が薄かったり、とにかく嫌いなタイプの文章。短い台詞の連続は一長一短の面があるから良いと思うけど、他の部分はなんだか読むのが面倒になるくらいのつまらなさ。内容はとても好みなのに、表現力が追いついていない気がする。他の作品もこんな感じなのだろうか?
 キャラはなかなか魅力的かと。小野塚だけはちょっとどうかと思いつつ、主人公も詞歌も萩生もあの薄い密度の中でバックグラウンドとキャラクターの理由が比較的明確に書かれてて、楽しめた。詞歌のビッチ具合が最初はイラっときたけど、後半になるにつれてなんだか少し好きになってしまったのは不覚だった。

 名言
「いろいろ考えてるうちに、怖くなって。自分が死ぬのも怖いけど、誰かが死ぬのも怖いんだ。僕が、誰かが、死んだらどうしよう。いつも、そのことばっかり……頭から離れなくて。痛いんだ。ずっと、痛くて」